2024年9月27日金曜日

住み込みバイトの思い出

※主に仲間の一人に対する愚痴です。 

10年以上前、農家で住み込みのアルバイト(ボランティアバイト。給料は安いが、住むところとお米を提供してもらえる)をしたことがあった。そのときのバイト仲間にRさん(当時36歳)という人がいた。

Rさんは、私がアルバイトを始めて一週間ほど後に来る予定だった。ところがアルバイト先にやって来る日の直前になって「母の体調が悪いので、そちらに行くのを一週間延ばしたい」と連絡してきた。雇い主(愛称:お父さん)は渋い顔をしており、私も「アルバイト仲介業者のサイトに、現地入りの日取りを決めたらキャンセルや変更をしないようにと書いてあったのに」と、Rさんの振る舞いに疑問や不快感を覚えた。

ようやくやって来たRさんは、初対面の私達に延々と自己紹介をしたり、いきなり携帯のメールアドレスを交換しようとしたり、と少し違和感を感じさせる行動を取った。私は、Rさんのペースに巻き込まれると面倒なことになると感じ、部屋にとじ込もってメアド交換はしなかった。

Rさんは、農家にアルバイトに来たというのに「いやぁああ!生き物嫌いぃ~!」と虫を見るたびに大声で騒いだり、「町で履けるレインブーツだったのに…」と自分の長靴が泥で汚れたことを嘆いたりした。

バイト専用の寮で、ルームシェア形式で私達は生活したのだが、居間にあったお菓子を勝手に畑に持ってきて、休憩中に「どうぞ」と配ったこともあった。他のバイト仲間は、居間のお菓子とは別に、自前で用意した駄菓子を交換していたが、Rさんは「自分で用意する」という考えがなかったらしい。

以下、Rさんのエピソードを記す。

・ごはん事件

Rさんは初め(定員オーバーだったので、一人が地元に帰るまでの1週間くらい)、私達とは別の農家の寮にいて、そこからアルバイト先に通っていたが、そこのお米がおいしくないと文句を言っていた。ある朝、仕事の前に私達が生活する寮に寄り、「ここ(のごはん)の方がおいしいから」と私達が炊いておいて残ったごはん(みんなでお昼に分けて食べるつもりだった)を勝手に全部食べてしまった。

お昼に食べるはずのごはんがなくなってしまったことに、最年少のバイト仲間・Hちゃんが気付いた。その旨をRさんに言うと、Rさんは「私はぁ~今、ごはん食べるので精一杯だからぁ~Hちゃんがごはん炊いてぇ~」と甘え声で頼んだという(我々は先に集合場所に出掛けていたので後からHちゃんに状況を聞いた)。

Hちゃんは仕方なくお米をといで炊飯器にセットしたのだが、始業前で急いでいたこともあり、うっかり炊飯器のタイマーをオンにするのを忘れてしまった。

お昼になり寮に戻ると、お米は炊けておらず、Rさんは「あれぇ~?Hちゃんに頼んだんだけどぉ~」と、あたかもHちゃんだけが悪いかのような言い方をした。その日の昼は、私を含めたバイト仲間はパンや麺を食べてしのいだ。 

Rさんが言うには「ごはんなくなっちゃったからぁ~Hちゃんと大騒ぎして準備したんだけどぉ…」とのことだったが、後からHちゃんに聞いたところによると、「Rさん、自分はなんもせずに“間に合わないよ!早く早くっ”ってあたしのこと急かしたんですよ…」とのことだった。

・上着ねじ込み事件

この「ごはん事件」より前か後かは忘れてしまったが、あるときRさんと私が並んで作業場に向かっていたとき、突然Rさんに「ねぇ~ぼんちゃん、ちょっとカバン持ってぇ~」と頼まれたことがあった。私が彼女のカバンを持つと、「上着、脱ぎたくってぇ~」と言い、脱いだ上着を私に持たせた自分のカバンにねじ込んできた。

「ごはん事件」と「上着ねじ込み事件」で、なんて厚かましい人だろう、と私は腹を立て、それまで「なんとなく好きではない」と思っていたRさんが「大嫌い」になった。

私がRさんに腹を立ててカリカリするのを、バイト仲間はなだめながらも「困ったものだ」と思っていたことだろう。私も、自分の態度が幼稚だと自覚していたが、他の仲間のように適度に距離を保ってあしらうということがどうしてもできなかった。

・パイプクリーナー事件

Rさんは、あるときお風呂の排水管が詰まったからとパイプクリーナーを無断で買い、後から代金をバイト仲間に請求した。割り勘だったので一人100円程度だったが、勝手に購入したものの代金を請求されて私は納得できなかった。その上、私が排水口の蓋を開けて大量に残っていた髪の毛を取り除いたところ、詰まりはあっさり解決した。

私が「…クリーナーを買う前に髪の毛を掃除すれば良かったんじゃないですか?」と言うと、Rさんは慌てて私が出した分だけを私に返してきた。私は、「別に返してくれなくてもいいけど、今度からは一言相談してください」と冷ややかに言った。

年長のMさんは、「掃除するとき使えるから、まあいいよ」と優しく言い、他の仲間も同意していた。みんな優しい。私だけはどうしても優しくなれなかった。

・Rさんはバイリンガル

Rさんは、英国に留学(どのくらいの期間かは忘れた)していたそうで、まあ本人が言うには「英語が得意」らしかった。しょっちゅう「ウップス」(Oops、英語で「おっと」とかいうような意味)と言っていたので、嘘ではないのだろう。でも鬱陶しいなあと思った。

・お別れ会

それでもRさんなりに努力はしており、自発的にゴミ出しの曜日や場所を仲間に訊ねるなど、バイト仲間が評価するような進歩も見られた。

しかし、私を含めたバイト仲間のほとんどがそれぞれの地元に帰ることになったとき、Rさんが「お別れ会をしよう」と言い出したのだが、「お店選びは(バイト仲間の)Yちゃん、お願ぁい」と最後まで他人任せだった。

「Yちゃんはぁ~ここ(バイト先のある県)の人だからぁ~」とRさんは言ったが、Yちゃんの家は同じ県にあるというだけで、バイト先の辺りはほとんど土地勘がなかった。優しいYちゃんは、バイト先近辺の居酒屋を調べてお別れ会を開いたが、私は仕事以外の時間までRさんと顔を合わせることに耐えられず、行かなかった。

・Rさんの目的

Rさんに「何しに農家に来たの?生き物嫌いなんでしょ?」と呆れて訊ねたところ、「田舎でのんびりできるかなあって思って」と答えた。

彼女は、我々と同じようにボランティアバイトの募集を見てやって来たはずなので、バイト先には仕事をしに行くと納得したはず、と私は思い込んでいた。だから「そもそも仕事をしに来ているという意識が希薄である」ということに驚き呆れた。図々しい上に頭が悪いんだな、と口汚いことを考えてしまった。 

この他、「休みが週一回なんて(バイト募集のサイトには)書いてなかった~」と文句を言ったり(そんなことはないはずだ。現に私は「休日:週一回」と書いてあるのを見た記憶があるし、そのつもりで現地入りした)、「お父さんに電話したときぃ~お酒飲んで酔っ払ってたのぉ~。信じられな~い」というようなことも言っていた。朝早くから働いているお父さんにとって、晩酌は毎日欠かせない楽しみなのだから大目に見てあげればいいのに、と私は内心舌打ちした。

そんなに田舎でのんびりしたければ、お金を出して素敵なペンションにでも滞在すればいいのに、と思った。Rさんがなぜボランティアバイトを選んだのかが未だに分からない。

・Hちゃんの反応

Hちゃんは、Rさんに迷惑をかけられながらも「Rさん、おもしー(=面白い)www」とRさんの変人ぶりをむしろ楽しんでいた。Hちゃんのその柔軟さは羨ましく思える。


後にも先にも、Rさんほど甘ったれで厚かましい人に出会ったことはない。しかし、私も心が狭かったし、今でもそれは直っていない。大らかな性格の持ち主や、どんな人とも適度に距離を保って付き合える人が羨ましいと今でも思う。

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