モチーフにしたのは中島みゆきの『白菊』(アルバム『月-WINGS』収録)と、小川未明の『月夜とめがね』。
露天風呂で月を見ていて、『白菊』の歌詞の真似をして手にお湯を掬い月を映してみた。ものすごく小さくしか映らず、期待していたのと違ってがっかりした。それでも、「これをネタにして何か書けないかな」と思って書いてみた。
『月夜とめがね』は子供の頃どういうわけかすごく好きな話だった。とにかく月夜の描写の美しさが印象に残った。私が読んでいたのは『少年少女世界童話全集 別巻2 国際版 赤いろうそくと人魚』だったが、幻想的で繊細な挿絵(特に眼鏡売りのおじさん)も気に入っていた。
「白い野ばらの花が、こんもりとかたまって、雪のように咲いています。」という表現が好きで、そこから野茨が好きになった。
廃屋に泊まるくだりは、ジョルジュ・サンド『母のおもかげ』(ジョルジュ・サンド/山主敏子 訳 偕成社)の真似。
これも子供の頃気に入って何度も読んだはずだが、断片的に覚えているだけで、最近読み返してここまで美しい描写だったのかと驚いた。特に荒れ果てたピクトルデュの館に植物が生い茂っているところや、主人公のディアーヌが館の妖精と夢の世界を散策するところ。
また、登場人物もこんなに面白かったのかと感心した。絵は売れているが俗物の父。見栄っ張りのブランシュ。浪費家で浅薄な継母。博識で芸術と子供の才能への見識はあるが短気なフェロン博士。
ディアーヌがあまりにいい子なので周りがクセの強い人物でないとつまらないのだが、私は子供の頃、彼らの魅力が全く分かっていなかった。特にブランシュ。見栄っ張りで気位が高くて、根はいい子だが浅はか。
ただこれは子供向けに訳された本なので、どうしても概要を駆け足で述べた感じは拭えない。原作『ピクトルデュの城』(の日本語訳)も読んでみたい。
酔いどれのくだりは、李白が「酔って湖に映った月を取ろうとして水に落ちて死んだ」という伝説より。空飛ぶ魚は、谷山浩子の『まっくら森の歌』の「魚は空に」と部分、あと鷺沢萠の『海の鳥・空の魚』のタイトル(の言葉)をイメージした。